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5Gがワイヤレステストの新時代をけん引する

5Gのメリットには、複雑化の代償が伴う。

5Gテストのための新しい技術開発が必要。

低コストのOTA(over-the-air)テストが新たに必要。

image descriptionセルラー通信が開始されて以来、テストエンジニアはRF半導体や基地局、携帯電話にいたるまで、膨大な量のワイヤレス通信テストのために、一連の計測とテクニッックの反復に従事してきました。 しかし5Gでは、無線デバイス内部の技術が一層複雑化します。そのため、旧世代でテストに用いられてきた、高度に最適化された技術を見直ししなくてはならなくなりました。 5G技術のパフォーマンスを検証するには、現在使用しているケーブル接続方式ではなく、OTA(over-the-air)方式で5Gのコンポーネントやデバイスをテストする必要があります。 エンジニアリングリーダーとして、数々の業界やアプリケーションで5G製品/ソリューションの商用化を確実に実現するためには、新しいテスト方式が必要です。

帯域幅を広げる

5G規格の重要な目的のひとつは、増加し続けるユーザのデータ需要に対応すべくデータ容量を大幅に増大することですが、ピーク帯域幅がユーザあたり10 Gb/sという目標を達成するため、新たな技術が導入されます。 まず、5Gの仕様には、MU-MIMO(マルチユーザMIMO)技術が含まれます。この技術では、ユーザごとに固有のワイヤレス接続を確立するビームフォーミング技術により、複数のユーザが同じ周波数帯を同時に共有することができます。また、5G規格では多くの無線周波数帯が追加されており、センチメートル波やミリメートル波(ミリ波)といった周波数まで拡張されています。

image description MU-MIMO技術とミリ波技術の両方を物理的に実装すると、旧世代の通信規格よりも非常に多くのアンテナ素子を使用するようになります。物理法則により、ミリ波周波数の信号は、現在のセルラー方式で使用している周波数よりも、空間を移動する際に非常に早く減衰します。 したがって、同じ送信電力レベルの場合、ミリ波の周波数帯では現在のセルラーバンドよりカバーする範囲がかなり狭くなります。

現在のデバイスではバンドごとに単一のアンテナを使用していますが、5Gの送信機および受信機では、同時に動作するアンテナアレイを使用し、ビームフォーミング技術により信号電力を高めることで、この経路損失を解消します。 このアンテナアレイとビームフォーミング技術は、信号電力の向上のためだけでなく、MU-MIMO技術を導入するうえでも極めて重要です。

image description 今後の携帯電話にこれらのアンテナをどうやって実装すればよいでしょうか。 幸いなことに、ミリ波帯のアンテナは現行規格で使用されているセルラーアンテナよりも大幅に小型化されます。 AiP(Antenna in Package)などの新しいパッケージ技術により、これらのアンテナを最新スマートフォンの小さなスペースに簡単に統合できるようになりますが、アンテナアレイが完全に封入されてしまい、直接接触可能なテストポイントがなくなる可能性があります。

5Gはアクティブアンテナアレイを使ってセルラー方式MU-MIMO機能を導入する

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OTAで新しい課題に対処

テストエンジニアは、周波数の増加、新たなパッケージ技術、およびアンテナ数の増加により、投資コスト(テスト装置のコスト)と運用コスト(各デバイスをテストする時間)の両方の増加を制限しながら高品質を維持することが困難になります。 新しいOTA技術によってこの問題を解決に導くことができますが、同時に課題も生じます。

第一の課題は、計測確度です。 ケーブル接続のテストとは異なり、OTA計測では、テストエンジニアはアンテナの校正と確度、固定許容範囲、信号反射から生じる計測の不確実性に対処する必要があります。 第二に、新たな計測をデバイスのテスト計画に統合して、無響室の統合、ビームの特性解析、最適なコードブック の計算、およびアンテナパラメータの特性解析を行う必要があります。 第三に、RF帯域幅が増加を続けると、広帯域幅での校正および計測実施の処理ニーズも高まるため、テスト時間増加の懸念につながります。 最後に、テスト管理者は、市場投入までの時間、設備コスト、運用コスト、(OTAチャンバを設置するための)床面積への影響を最小限に抑えながら、製品の品質を保証するためにビジネス上の検討を行う必要があります。 今後数年間で、テスト/計測業界は数々の新しいイノベーションにより、これらの課題に速やかに対応していくことになります。 テストグループは、高い柔軟性、ソフトウェア定義のテスト戦略、およびプラットフォームについて検討し、現在の設備投資費で急速なイノベーションのサイクルを維持していけるようにする必要があります。このような課題がある反面、メリットもあります。

まず、AiP技術ではアンテナアレイがパッケージ内部に統合されており、アレイ素子に直接ケーブル接続できないため、OTAが唯一の選択肢となる点です。 テストエンジニアは、実施するテスト方式を使って各アンテナ素子に接触することができても、それらを並行してテストする(多くの計測器を調達するための設備投資費が必要)か、あるいは連続してテストを行う(テスト時間とスループットの運用コストがかかる)か、という難しい選択を迫られます。 多くの技術課題が依然として残っていますが、OTAテストでは個別の素子のセットではなく、アレイをシステムとしてテストすることが可能なため、システムレベルのテストで効率向上につながります。

テスト装置のサプライヤやテストエンジニアはこれまでも、市場投入までの時間やテスト費用を最小限に抑えながら、性能が向上し複雑化する対象をテストするという課題に挑んできました。同じ挑戦が、5Gでも行われます。5Gテストの課題は今のところ複雑な様相を呈していますが、既に世界各国のエンジニアが、5Gの商用化に向けてOTAのような新しいテストを対象とした計測器や手法の開発を進めています。

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Charles Schroeder

NI ビジネス/テクノロジフェロー

NI Trend Watch 2019:確実な将来の展望を描くためにメガトレンドを見直す

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